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フェルミ推定という思考のトレーニング方法がある。思考力を圧倒的に高めたい人は、ぜひやっておくべきトレーニングである。このトレーニング方法の良いところは、答えを出すためのプロセスを強制的に経験できるところにある。インターネットが普及し、「検索すれば答えがある」という便利な世の中になった。しかし、すぐに答えを見つけられる便利さと引き替えに、考える機会が圧倒的に減ってしまっている。考える機会が減ると、問題に直面したときに、自分の頭で考えて突破する能力が低くなってしまう。
今の時代、私は知識をもっていること自体にあまり価値はないと思っている。どれだけ勉強して知識を身につけても、そんな知識は小指サイズのメモリスティックにすべておさまってしまう。しかも、Googleで検索すれば大抵の情報は出てくる。つまり、今の時代は情報をもっていることではなく、情報から価値を生み出す方法論をもっていることが評価される。問題に直面したときに、問題を突破するプロセスを描けるか。ここが優秀なビジネスパーソンと、そうでない人を分けるポイントになってくるだろう。
では、情報から価値を生み出す方法論、問題を突破する力はどのようにして身につけることができるのか?
その1つの効率的な方法が、冒頭で紹介した「フェルミ推定」という思考トレーニングである。この思考トレーニングを、2週間続けるだけで、あなたの思考力は飛躍的に伸びるだろう。問題解決をしようとするクセがつくので、仕事で今までよりも多くの提案ができるようになると思う。現に、私もフェルミ推定を数週間トレーニングして、考える力が飛躍的に伸びた経験をした。まるで魔法のようだが、地道に2週間ほど続けるだけで、意外なほど大きな効果があるのだ。
このフェルミ推定で、非常に良い参考文献で細谷功氏の「地頭力を鍛える」(東洋経済新報社)がある。この本は、フェルミ推定を活用して、地頭力すなわち考える力を伸ばすというコンセプトで作られている。私自身、この本と出会って非常に興奮した記憶がある。外資系のコンサルティング会社に入って、1年ちょっと過ぎた頃にこの本と出会ったが、コンサルタントとして必要なスキルが見事にまとめられていると思った。学生時代にこんな良著が出ていたらなぁと思ったものである。就職活動生にとっては必読だし、若手ビジネスパーソンも必ず読んでおいた方がいい本だと思う。
では、フェルミ推定について説明をしていこう。
最初に、フェルミ推定を使って思考力を鍛える上で、正しい答えを知ることに意味はないということを認識して欲しい。ここで鍛えるべきスキルは、正しい答えを知ることではなく、答えを導き出すためのプロセスを頭にたたき込むということである。世の中に溢れている問題は、それぞれが固有のものだが、問題を解決に導くプロセスは一定のパターンがある。そのパターンを多く身につければ身につけるほど、問題解決のスピードもクオリティも高くなる。そもそも、問題解決をパターン化できなければコンサルタントという職業は成り立たない。いつも、ゼロから問題解決プロセスを設計していたのでは、時間がかかって仕方ないし、質の高いコンサルテーションは行えない。ある程度のパターン化ができて初めて、短時間で人が納得するような解を導くことができるのだ。
たとえば、「日本国内のパソコン普及台数を計算せよ」という問題にあなたはどう答えるだろう?
ここで、Googleに頼ってしまうとそこで負けである。歯を食いしばって、分からないなりに自分の頭で考えることが、価値を生み出すプロセスを作り出すのに必要なのだ。正解を導き出すことに意味はない。正直言って、全然違う答えでもいい。なぜなら、答えを出すことに意味はないし、正解してもしなくても、答えを導くプロセスさえ自分で作ることができれば、他の問題解決に応用できるからである。まずは、気軽にやることが大切である。成功する人間はまず、行動する。
この下に、私なりの考え方を書いているので、まずあなた自身が回答を導いてから、読み進めてほしい。けっして、私の回答が正解ではなく、1つの考え方だ。何度も言っているように、プロセスを設計することが重要だから、まずは自分なりの回答プロセスを設計して回答を導いて欲しい。
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あなたの回答に至るプロセスは、どのような内容だったか?
私の場合は、次のようなプロセスで解を導いた。
1.軸を決めてカテゴリ分けをする(企業/家庭の軸で切った)
2.カテゴリを計算できるように細分化する(企業/家庭を細分化)
3.単位別の普及台数を推測
4.回答に必要な数字をはじき出す
5.かけ算で回答を導く
1.軸を決めてカテゴリ分けをする(企業/家庭の軸で切った)
まずは、全体的な視点をもつことが大切である。日本国内のパソコン普及台数だから、日本全国という全体的な視点を持ち、そこから軸を決めてカテゴライズする。私の場合は、日本全国から、企業と家庭をいう軸で分けた。台数をはじき出す計算は、企業と家庭で異なるし、日本全国という大きな括りを、企業と家庭でキレイに分けることができるからである。(この場合、企業に学校や、役所などの公的機関も含む)
2.カテゴリを計算できるように細分化する(企業/家庭を細分化)
企業や家庭というざっくりしたカテゴリでは、普及台数を計算するのは難しいので、ここからさらに細分化をしていく。企業は、大企業/中小企業/役所/学校に細分化し、家庭は4人?1人家族に細分化する。ここで、予想される反論は、家庭は5人家族もいるし、大家族のテレビ番組で10人家族なんていうところもある、という反論だ。たしかに、5人家族もいれば、10人家族もいるだろう。しかし、ここで必要なのは枝葉末節の正確さではなく、だいたいの正確さである。ある程度は単純かして考えないと、細かい部分に気をとられ、解を導くのが非常に大変になってしまう。
3.単位別の普及台数を推測
次に、細分化したそれぞれの単位あたりの普及台数を計算する。ここでも自分で仮説を立てて、ざっくりとした計算をしていく。
大企業ならば、社員1人に対して1台はパソコンが割り当てられているだろう。ここは容易に想像がつく。では、中小企業はどうだろうか?社員1人に対して、パソコンは1台もあるだろうか?田舎の中小企業では、未だにパソコンを使わず仕事をしている社員もいるだろう。または、1つのパソコンを共有して使っているところもあるはずだ。なので、ここはざっくりと社員2人に対して、1台の普及と計算する。また、役所は職員それぞれにパソコンが1台あるだろうし、学校も先生1人に対して1台は普及しているはずだ。
続いて、家庭はざっくりと1家庭あたりに1台と計算してみる。(パソコンのない家庭もあるし、2台、3台と持っている仮定も確かにあるだろうが、ここは単純に計算できるように、ざっくりと仮定をおく)
4.回答に必要な数字をはじき出す
ここまで来たら、あとは回答に必要な数字をはじき出すだけである。ここは若干の知識があるとやりやすいが、わからなければ自分なりに仮説を置いていけばいい。正確さにとらわれるより、大胆に仮定していった方がスキルは伸びる。大切なのは、プロセスを設計することであり、正確な答えを求めるのではないのだから。
まず、企業カテゴリは、それぞれに所属する人数をはじき出すことができたら、パソコンの普及台数を導くことができる。ここで、大企業と中企業はどう違うの?というところが疑問にあがると思う。ざっくりとしたイメージは、大企業は従業員が多く、中小企業は従業員が少ないというものだろう。実際は、業種によっても異なるが、基本的には従業員数か資本金で区別されている。製造業は300人、サービス業は100人と、小売業は50人とそれぞれボーダーラインは違うが、ここはざっくりと仮定して、大企業は100人以上、中小企業は100人未満とする。
中小企業は300万社、大企業はその0.5%の1万5000社と仮定して、中小企業の平均は10人、大企業の平均を500人とすると、
・大企業 1万5000社 × 500人 = 750万人
・中小企業 300万社 × 10人 = 3000万人
役所と学校もざっくり計算すると、
役所や学校は47都道府県にあるが、人口に比例してその数は増えると思う。そこで、ここでは大胆に役所と学校を一緒にして、人口の3%が役所または学校に従事していると仮定する。日本の人口は1億2000万人なので、その3%は360万人である。
・役所/学校 1億2000万人 × 3% = 360万人
次に、家庭の数を計算してみよう。
ここもざっくりと仮説を立てた計算でかまわない。
日本の人口のうち4人家族に属する人を全体の20%、3人家族を全体の30%、2人家族を全体の30%、1人の世帯を全体の20%とすると、それぞれの家庭数は以下のようになる
・4人家族 1億2000万人 × 20% ÷ 4人 = 600万家庭
・3人家族 1億2000万人 × 30% ÷ 3人 = 1200万家庭
・2人家族 1億2000万人 × 30% ÷ 2人 = 1800万家庭
・1人世帯 1億2000万人 × 20% ÷ 1人 = 2400万家庭
5.かけ算で回答を導く
そして、最後にかけ算でパソコン普及台数を計算する。
・大企業 750万人 × 1台 = 750万台
・中小企業 3000万人 × 1/2台 = 1500万台
・役所/学校 360万人 × 1台 = 360万台
・4人家族 600万家庭 × 1台 = 600万台
・3人家族 1200万家庭 × 1台 = 1200万台
・2人家族 1800万家庭 × 1台 = 1800万台
・1人家族 2400万家庭 × 1台 = 2400万台
トータルで8610万台、という答が出た。
おそらくこの数字は、正確な数字ではないと思うが、大切なのはこの数字を導くためのプロセスを自分の頭で考えられたかだ。日本人は仮定を置いて考える事を嫌がる人が多い(たぶん完璧主義者が多い)が、仮定をおくことで思考を先に進めることができる。ここが一番大きなメリットだ。
こういう問題は、作ろうと思えば自分でいくらでも作ることができる。
「日本全国の本屋さんの件数は?」
「日本全国のファミレスの件数は?」
「日本全国のトイレの数は?」
「日本に弁護士は何人いる?」
「日本にプロスポーツ選手は何人いる?」
など、いろいろと自分で問題を設定して、1日10分でいいから時間を使って解いていくと、必ずあなたの考える力は飛躍的に伸びる。継続が、他との差別化になる。
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